年中の行き渋り:あの時、僕は『みんな普通に行ってるよ』と言ってしまった

年中の行き渋り。みんな普通に行ってるよと言ってしまった

息子が保育園年中の頃。

保育園への行き渋りが、たまに見られるようになりました。

スムーズに登園する日もあれば、泣きながら「行きたくない」と言う日もある。

でも毎日ではない。

この年齢なら、よくあることだと思っていました。

精神科で18年働く作業療法士として、子どもの発達や心理についても学んできた僕が、わが子に対してはまったく冷静になれなかった。

泣いて車から降りられない息子を見て、

「仕事がある」

「時間がない」

「早く保育園に行かせなきゃ」

そんな焦りが、息子の気持ちを受け止める余裕を奪っていました。

「みんな普通に行ってるよ」

「ちゃんと行って」

今でも忘れられない、あの時僕が息子にかけてしまった言葉です。

精神科OTパパについて
精神科OTパパの人のアイコン
  • 精神科病院で作業療法士18年目
  • 現在、精神科デイケアセンター長
  • 息子(長男)の5年間の不登校(小1~小5)で、親である僕と妻が”どのような悩みを抱き”、”対立し”、”息子にヒドイことをしてきたか”その経過を発信
この記事でわかること
  • 年中の頃の行き渋りの様子と、僕が「普通のこと」と軽視した理由
  • 専門職の僕が「みんな普通に行ってるよ」と言ってしまった葛藤
  • 学習塾での分離不安など、当時見逃していた子どもの小さなサイン
  • 専門知識と父親としての焦りが矛盾し、子どもの気持ちを後回しにした実体験
  • 年中・年長の行き渋りを軽く見る前に、親が知っておくべきこと
目次

年中の息子、たまに泣いて登園

泣いている保育園児

息子が年中になって数ヶ月が経った頃、朝の登園時に時々ぐずるようになりました。

機嫌よく車に乗る日もあれば、「保育園行きたくない」と泣きながら訴える日もある。

でも、毎日というわけではありませんでした。

泣いている日でも、保育園に着くと先生が優しく迎えてくれて、僕たち親が車に戻る時には涙を流しながらもバイバイができる。

先生からは「しばらくすると泣き止んで、お友達と遊んでますよ」と報告を受けていました。

帰宅後の息子は「今日は〇〇くんと遊んだよ」「給食おいしかった」と普通に話してくれる。

だから僕は、「この年齢の子にはよくあること」だと思っていました。

精神科で働く作業療法士として、子どもの発達についても学んできた知識が、逆に僕を油断させていたのかもしれません。

精神科OTパパ

「分離不安は発達の過程で見られるもの」
「年中くらいなら、甘えが出る時期」
「保育園で楽しく過ごせているなら問題ない」

専門職としての知識が、父親としての僕の目を曇らせていました。

息子が発している小さなSOSに、僕は気づけていなかったんです。

精神科OTの僕が、わが子に言った言葉

朝、保育園に着いても車から降りられない日がありました。

泣きながら「行きたくない」と言う息子。

僕は時計を見ます。

仕事に遅れる時間が迫っています。

精神科OTパパ

「みんな普通に行ってるよ」
「ちゃんと行って」

僕の口から、こんな言葉が出ていました。

精神科で働く作業療法士として、僕は知っているはずでした。

子どもの不安を「みんな」という言葉で否定してはいけないこと。

「普通」という基準で子どもを測ってはいけないこと。

でも、父親としての僕は、その知識をわが子には使えませんでした。

「保育園に着いたらちゃんと楽しく過ごせるんだから」

「泣いてるのは最初だけでしょ」

「パパも仕事行かなきゃいけないんだよ」

こんな声掛けも、よく言っていました。

今思えば、どれも息子の気持ちを受け止めていない言葉ばかりです。

息子は何も言い返さず、涙を流しながら先生に手を引かれて保育園に入っていきました。

車のバックミラー越しに見える、小さな背中。

「これでいいのかな」という疑問を感じながらも、僕は仕事に向かっていました。

学習塾での様子が示していたサイン

この頃、息子は学習塾にも通い始めていました。

保育園児向けの学習塾で、他にも保護者が待機している子はいました。

でも、息子の場合は少し違っていました。

僕や妻の姿が見えなくなると、不安で泣き出してしまうんです。

だから僕たちは、息子が塾で学んでいる間、ずっと塾内で待機していました。

保育園児だから、待っている親がいても特に珍しくはない。

そう自分に言い聞かせていました。

でも今振り返ると、あれは明らかなサインだったんです。

「親の姿が見えないことへの強い不安」

精神科で働く僕なら、他の家族から相談されたら「分離不安の傾向があるかもしれませんね」と伝えていたかもしれません。

でも、わが子のこととなると、そのサインを「ただの甘え」「そのうち慣れる」と解釈してしまっていました。

保育園での行き渋りも、学習塾での不安も、すべては繋がっていた。

息子は一貫して「親と離れることへの不安」を訴えていたのに、僕はそれを深刻に受け止めていませんでした。

精神科OTパパ

まだ年中だし
保育園では楽しくやれてるし
先生も大丈夫って言ってるし

そうやって、自分を、そして息子の不安を、ごまかしていたんだと思います。

専門職としての知識と、父親としての焦り

精神科の作業療法士として、僕は子どもの心理についても学んできました。

不安を抱える子どもには、まず気持ちを受け止めることが大切。

「〇〇なんだね」と共感することから始める。

「みんな」「普通」という言葉で比較しない。

頭ではわかっているんです。

患者さんやそのご家族には、そうアドバイスもしてきました。

でも、わが子が朝泣いて車から降りられない時、僕の中にあったのは「焦り」でした。

精神科OTパパ

「早く仕事に行かなきゃ」
「遅刻するかもしれない」
「他の子は普通に行ってるのに、なんでうちの子は」

専門職としての知識と、父親としての現実。

その間で、僕は完全に後者に飲み込まれていました。

職場では冷静に子どもの心理を分析できるのに、わが子の前では焦って、急かして、比較してしまう。

この矛盾に、当時の僕は気づいていませんでした。

いや、薄々気づいていたけど、認めたくなかったのかもしれません。

「うちの子は大丈夫」

「一時的なもの」

「そのうち慣れる」

そう信じたかったから、息子の出しているサインを、僕は意図的に見逃していたんだと思います。

今だからわかる、あの時の息子の気持ち

息子が中学1年生の時、あの頃のことを息子と話したことがあります。

「年中の時、保育園行きたくないって泣いてたよね。あの時どんな気持ちだった?」

息子は少し考えてから、こう言いました。

「なんか、すごく不安だった。何が不安なのかわからないけど、お父さんやお母さんと離れるのが怖かったんだと思う」

そうだったんだ。

息子は、理由がわからないまま不安を抱えていた。

その不安を、どう言葉にしていいかもわからなかった。

だから「行きたくない」としか言えなかった。

そんな息子に、僕は「みんな普通に行ってるよ」と言ってしまっていた。

この言葉が、息子にどう聞こえていたか。今ならわかります。

「僕はみんなと違うんだ」

「普通じゃないんだ」

「パパは僕の気持ちをわかってくれない」

息子は、パパに理解してほしかったんです。

不安な気持ちを、受け止めてほしかった。

でもパパは「早く行って」しか言わなかった。

あの小さな背中がバックミラー越しに見えた時、息子はどんな気持ちだったんだろう。

「パパは僕より仕事が大事なんだ」って思ったかもしれない。

そう考えると、今でも胸が痛みます。

【今の僕から当時の僕へ】年中・年長の行き渋りを「よくあること」で終わらせないで

メッセージ

息子の5年間の不登校を経験した今、もし当時に戻れるなら、自分に言いたいことがあります。

精神科OTパパ

「年中・年長の行き渋りを、軽く見ないで」

この年齢の行き渋りは、確かによくあることです。

成長の過程で見られる、一時的なものかもしれません。

だから「この年齢なら普通」と思いたくなる気持ち、本当によくわかります。

僕もそう思っていました。

むしろ、精神科で働く専門職として「これは発達の過程」と自分に言い聞かせていました。

でも、子どもは何かを伝えようとしているんです。

「不安なんだ」

「怖いんだ」

「助けてほしいんだ」

それを、まだ言葉にできないだけ。

たまに泣く程度だから、保育園では楽しく過ごせているから、大丈夫。

そう判断してしまうと、子どもの小さなSOSを見逃してしまいます。

僕は、精神科の作業療法士という立場にありながら、わが子のサインを見逃しました。

親の姿が見えないと泣く。

朝、たまに行き渋る。

でも園では楽しく過ごしている。

こういった状況を「問題なし」と判断してしまったんです。

もし今、同じような状況のお子さんを持つ親御さんがこのブログを読んでくれていたら、お伝えしたいです。

お子さんが出している小さなサイン、見逃さないであげてください。

もし当時に戻れるなら、こう声をかけたい

もし、あの時の朝に戻れるなら。

泣いて車から降りられない息子に、僕はこう声をかけたいです。

精神科OTパパ

「行きたくないんだね」

まず、息子の気持ちを受け止める。

否定しない。

急かさない。

精神科OTパパ

「何が不安なの?パパに教えて」

息子が言葉にできなくても、聞く姿勢を見せる。

「みんな」「普通」という言葉は、絶対に使わない。

息子は息子のペースでいい。

他の子と比べる必要なんて、まったくない。

精神科OTパパ

「パパも一緒に先生のところまで行こうか」
「手を繋いで行こう」

不安な息子を、一人で先生に引き渡すんじゃなくて、一緒に保育園に入る。

先生に「最近、朝が不安そうで。しばらく様子を見ていただけますか」と相談する。

仕事に少し遅れるかもしれない。

でも、それでいい。

息子の心を守ることの方が、何倍も大切だった。

当時の僕は、それに気づけませんでした。

「仕事に遅れる」

「周りの目が気になる」

「この子だけ特別扱いできない」

そんな大人の事情を優先して、息子の不安を後回しにしてしまっていました。

まとめ:後悔は消えないけど、今の息子に救われている

精神科OTパパ

「みんな普通に行ってるよ」

あの時、僕が息子にかけてしまった言葉。

この言葉は、取り消すことができません。

年中の頃の行き渋りを軽く見てしまったこと。

息子の不安を「そのうち慣れる」と放置してしまったこと。

この後悔は、今も消えることはありません。

でも、息子は今、中学2年生になりました。

生徒会に立候補して当選し、皆の前で堂々と活動している。

サッカークラブに所属しながらもバレー部にも入って、学校生活を楽しんでいる。

あの頃、朝泣いて車から降りられなかった息子が、です。

息子は、5年間の不登校という長いトンネルを抜けて、ここまで成長してくれました。

もちろん、これは息子自身の力です。

妻の献身的なサポート、学校の先生方の理解、心療内科や発達障害者支援センターの方々の支援。

たくさんの人たちの力があったからこそです。

でも僕は、あの時「みんな普通に」と言ってしまった父親として、今も自分を許せない部分があります。

この記事を読んでくださっている方の中には、お子さんの行き渋りで悩んでいる方もいるかもしれません。

僕のように後悔しないために、お伝えしたいです。

もし今、お子さんが小さなサインを出しているなら。

「みんな」「普通」という言葉で、そのサインを見逃さないであげてください。

※この記事は、一つの家族の体験談です。医療的な助言や指導ではありません。お子さんの状況に応じて、必要な場合は専門機関(スクールカウンセラー、教育相談、医療機関など)にご相談ください。

【次回予告】

次回は、年長の頃のことです。

曾祖父の死、引っ越し、弟の誕生。

大きな環境の変化が重なった時期に、息子の行き渋りはさらに激しくなりました。

「いいかげんにして!」と怒鳴ってしまった朝のこと。泣きながら先生に引き渡す息子と、後ろ髪引かれる僕の葛藤を書きます。

▼次の記事
 年長の毎朝:泣きながら先生に引き渡す息子と、後ろ髪引かれる僕

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 息子の『学校に行きたくない』の裏に、何があったのか【親として振り返る】

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年中の行き渋り。みんな普通に行ってるよと言ってしまった

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この記事を書いた人

精神科OTパパのアバター 精神科OTパパ 精神科デイケアセンター(センター長)

精神科作業療法士18年×不登校経験者の父。息子の5年間の不登校を、看護師の妻と乗り越えました。中学生になった息子は、現在生徒会に入り活躍中。専門家でも無力だった体験を赤裸々に。同じ悩みを持つ親御さんへ。

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